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JA・関係機関 2023.03.15

繋がりや協力が一人では乗り越えられないことを乗り越える力に

佐藤 友志

鶴岡市農業委員会事務局
事務局長



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鶴岡市出身。鶴岡市職員(旧鶴岡市役所)として最初の配属も農業委員会事務局。その後、税務、国保年金、児童福祉を経て、現在(農業委員会事務局)に至っている。 「昔と今とでは、農地の事情も大きく変わってきており、常に地域の実情に即して施策を講じる必要があると感じている。特に、鶴岡市は東北一広い市であり、平場から中山間まで大きく事情が異なる。国では様々な施策を展開しているが、鶴岡に合った農地施策を農業委員・農地利用最適化推進委員と一緒に考えていきたい。」と語る。


農業委員会とはどのような仕事をするのですか?

 農業委員会の仕事は大きく分けて①農地に関する許認可、②農地利用の最適化、③関係機関への要望の3つに分けられます。

 これらは全て、守るべき農地を適切に守ることを目的としています。一度荒らしてしまった農地を再生するには手間も時間もかかります。だからこそ未然に防止することが大切なんです。また、農地を守ることは産地を守ることや、集落の維持・形成、大きく捉えると日本の食糧生産を維持するということにも繋がります。
 例えば農業を独立自営ではじめたいという場合には農地利用の申請が必要になるので、その地域の農業委員会を訪ねることになります。
 そういった場合にはまず新規就農者への支援として、どういった場所に農地を望むのかを含む条件の確認も行いますが、相談者が耕作を行うのに必要な知識や技術があるかや、どういった人柄なのかを面談の中で確認します。
 農地は地続きなので、一人の管理不足が全体に影響を与えます。そういった意味でも農業技術の習得というのは大切です。

 それから農業委員会は教育委員会や選挙管理委員会などと同様に、行政から独立した組織です。一方で全く関係がないわけではなく、私も市職員ですが、農業委員会に出向しているんですね。独立しているからこそ、公正に適切な判断ができます。

鶴岡市長へ要望書を提出
鶴岡市農業委員会ならではの特徴はありますか?

 「分散錯圃」という言葉があります。一つの農家が受け持つ圃場(畑や田んぼなど)が散在している状態のことです。もちろん1箇所に農地が集まっている方が扱いやすいのですが、これまでの経過などからどうしてもそういかないことがあります。
 鶴岡市農業委員会では平成29年に全国に先駆けてそういった状態の地域で情報交換会を開催しました。まずは不便に感じる人がいるのか、お互いに現状について話し合いました。

情報交換会の開催

 それからアグリランドバンク(新規就農者支援型)という制度を作りました。新規参入者の方が、農地を借りたいと思っても、タイミングよくリタイア等の貸し手農家が現れるとは限りません。この制度はやる気のある新規参入者に対して、新規就農者支援の観点から、自分の耕作地の一部を提供できる大規模農業者等をあらかじめ登録しておく制度で、鶴岡市農業委員会独自の取り組みです。
 農地の確保に関しては、研修先やアルバイト先の農家から農地を紹介してもらうこともよくありますので、実績はあまりありませんが、国や県から降りてきたことだけをするのではなく、現場の声を聞いて分析し、自分たちから発信する姿勢は重要だと考えています。

SEADS研修生との関わりを教えてください

 SEADSの研修生さんならではのというと、就農を希望する地域の農業委員・農地利用最適化推進委員と研修生との面談があります。どういった作物を育てたいのかといった農業の基本的な話はもちろん、その面談を通して顔を繋ぎ、お互いのことを知るという側面もあります。
 鶴岡市は東京23区が2つすっぽり入るほど大きな面積となっており、それぞれの地域で育てやすい作物や気候が違います。そのため「どんな農業がしたいのか」「どの地域に住みたいか」を選ぶことができますし、また、決めた後に地域の中で頼れる人を知ることも大切です。
 その地区の農業の紹介を行う顔合わせ会は、これからも継続的に続けていきたいですね。

これから農業をはじめたい方へメッセージをお願いします

 農業は地域との繋がりが大切です。アドバイスをもらったり、助け合ったりするという協力が一人では乗り越えられないことを乗り越える力になります。
 農家あるいは非農家という選択肢だけではなく、半農半X(農業と他の仕事を組み合わせた働き方)もありますし、継続することから見えてくるものもあります。諦めずに頑張って欲しいです。

ありがとうございました。

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